こんにちは。吉井りょうすけです。
ここでは、協会ビジネス(新家元制度)についての話をします。
教育ビジネスをやっている方ならば、検討したことのある方も多いと思います。僕は、創設者の前田出(まえだ いずる)さんから依頼を受け、その立ち上げをサポートしました。
 
ここでは、それらの知見を活かして、協会ビジネスについて気づいたこと、大切だと思ったことを、ご紹介します。
協会ビジネスのビジネスモデル作りで失敗しがちなこと、大切なポイントです。
 
 
基本から学びたい方は、協会ビジネスを広げる活動を、前田 健志さんが行っていますので、ご関心のある方は、こちらをご覧ください(https://www.kyoukai-biz.com/)。とてもいい講座を開催していらっしゃいます。

ポイント1 選ぶ商品がとても大切

 
協会ビジネスですーっと伸びていくか、伸びていかないか。その差を決めるとても大きな要素は「商品選び」だと思います。たとえば、日本中に広がりマスコミにも大きく取り上げられている「アンガーマネジメント」。怒りの連鎖を断ち切るために、理事長の安藤俊介さんがスタートしました。大成功した事業といっていいと思います。
でももしこのコンテンツが「笑い上戸(わらいじょうご)マネジメント」とか「かなしみマネジメント」とかだったら、同じように広がったでしょうか?
安藤さんは実力のある方ですから、ある程度まで「広げる」ことはできたと思いますが、「広がっていったか」。きっと難しいと思います。
選ぶ商品で、広がり方が変わります。
 
ポイントは、「コンセプト」と「品質」を分けて考えることだと思います。
コンセプトは「怒りをマネジメントするコンテンツ」とか「笑い上戸をマネジメントするコンテンツ」というように、「そのコンテンツがどんなものなのか、を一言で言い表したもの」です。
品質は、実際にどのくらいしっかりしたコンテンツなのか。おなじ「アンガーマネジメント」でも、品質の高いものと、低いものがあると考えると、「品質は中身の質のことだ」と伝わるでしょうか。
 
で、とても大切なのが「コンセプト」選びです。
共感してくれる人がいるのか、おもしろみがあるのか、問題意識を持っている人がいるか、たのしいか。
僕たちは「品質を高める努力」をすると、「このコンテンツは優れている。広がるはずだ」と考えてしまいがちです。広がるかどうか、重要なポイントは、品質ではなくて「選んだコンセプトだ」ということに、注意を払ってください。
ここに気づいていると、アイデアを出してコンセプトを磨くこともできます。
協会ビジネスのビジネスモデルは優れたものだと思います。コンテンツは広がりやすいし、仲間はできるし、努力が蓄積されていきやすい。
でも、だからといって何でも同じように広がるわけではありません。あなたはどれくらい広げたいですか?その気持ちに、あったコンセプトでしょうか?
 
 

2.メリットよりも、理念と共感で販売する。

 
集客セールスをよく学んでいる方ほど、「お客さんにメリットを伝えると、買ってもらえる」ことを知っています。
とても大切なことですが、協会ビジネスでは、より「理念」を前に押し出して、共感を生み出しセールスすることが大切です。
 
メリットを前面に押し出す方法は、「いくらお金を払ったら、◯◯を受け取れる」というような意味です。払った分だけ、受け取れる。払った以上に、受け取りたい。
メッセージとしては、「取引関係をつくろう」と呼びかけることに似ています。信頼関係ではなくて、取引関係です。
このとき、暗にお客さんに伝えているのは、「同じお金を払うなら、より多くを受け取れたほうがいいでしょう?」というメッセージです。すると「もっとほしい。もっとほしい」と、受け取りたい方が集まってきやすくなります。(そういう方が多くなるというよりも、受け取りたい方が要求してくる声が大きくなると言ったほうが、現実に近いけど)
 
でも協会ビジネスでつながりたいのは、「一緒に、このコンテンツを広げてくれる仲間」です。「ほしい、ほしい」という人ではなくて、「ひろげたい、この世界にあたえたい」というマインドの持ち主です。
そういうひとと、「取引関係ではなくて、信頼関係」「『ほしい人とあげる人』の関係ではなくて、一緒に世界を変える仲間の関係」を作るには、理念を伝え共感する人と出会いたい。
理念とは、「この価値を広げていくことに、意味があると思っている」ということです。
 
もちろん、メリットを伝えることは大切です。伝えなくていいわけではありません。メリットは伝えます。
でも、メッセージの構造上、より重きを置きたいのは理念。世界にどんな価値を提供したいのか。人をどう救いたいのか。
具体的なやり方として簡単なのは、いつも「「まず理念から伝えたり」、「いつも理念を伝えたり」することでしょうか。「自分たちにとって、理念が重要だ」ということが伝わるように工夫してみてください。生み出したいのは、理念への共感です。共感する言葉を考えてみましょう。
 
 

3.矛盾があると、止まる。簡単には、仕組みを変えられないから注意。

 
協会ビジネスのビジネスモデル、プラン作りは、時間をかけて行うことをお勧めします。ビジネスモデルの中に矛盾があると、どこかで動かなくなってしまうからです。この点は、もちろん他のビジネスモデルも同じなのですが、協会ビジネスは考える広さが後半になるので、意識することをお勧めします。
わかりやすいのは、「ひろげたい」と「ひろげたくない」のぶつかり合いでしょうか。
協会ビジネスを取り入れるひとは、「もっと多くの人に、コンテンツを届けたい」と考えています。
でも同時に、専門家肌の人は、「一緒に広げるインストラクターにも、自分と同じくらいの専門性、品質をもってほしい」と考えます。
 
それで、インストラクターにすごく高い品質を求めるばかりに、いつまでもインストラクター資格を提供しなかったり、
インストラクターにダメを出すことに忙しくなって、事業を広げることに力を入れなくなってしまうんです。
広げたい気持ちが協会ビジネスへの興味につながり、
広げたくない気持ちが、商品設計(資格の設計)に現れます。
 
「本当に専門性の高い人を、日本中に広げたいんです」
こんなことを言っている人は、注意してください。二つは矛盾しているケースが多いです。
 
他にも、「初級—上級—マスター」の流れが、つながりがないケースなども、よくあります。
 
矛盾があると、そこで事業は止まってしまいます。
この課題、クリアした話を聞くと「当たり前、普通のこと。基本」と感じるのですが、その渦中にいる人はなかなか気づけません。
 
だから、事業プランを考えるときに、半年くらい時間をかけて、自分のアイデアを上手に忘れ、塩抜きしながら形を整えたり、プロにコンサルティングを依頼したりすることをお勧めします。
協会ビジネスは、外部の人とはいえ、インストラクターを始め関わる人が多くなります。矛盾を修正することはもちろん後でもできますが、
事業がスタートしたあとだと、資格名を変更したりするだけでも一苦労です。最初にある程度しっかりしたプランを作ることが大切です。
 
 

4.価格が安すぎると、成り立たない

 
協会ビジネスは、インストラクターたちと「利益をシェアするしくみ」です。講座の価格が低いと、シェアする利益が生まれません。数万円以上の価格にしてください。
たまに、「簡単なコンテンツしかないんです」といって、3000円くらいの講座で協会ビジネスを作ろうという方がいるのですが、専門分野や、提供したい価値についてもっと学んでコンテンツを磨き、価格を上げることをお勧めします。(もちろん、目的によりますけど)
 
 

5.マーケティングやセールスというより、マネジメントを学ぼう

 
あなたは、売上を上げるために大切なことはなんだと思いますか?
経営者の実力によって答えは様々ですが、多くの人が答えるのは「集客やセールス」だと思います。売上を上げるために、売り方を工夫するのは、とてもわかりやすいからです。
協会ビジネスでも、設立当初は自分で集客販売しなければいけませんから、「集客とセールス」の力は大切です。
でも、ある段階からは、インストラクターが集客してくれるようにならなければいけません。このタイミングで、「集客力」ではなくて、「人に動いてもらう力」が大切になります。そしてそれは、マーケティングやセールスというよりも、マネジメントの分野の知識なんです。外部のインストラクターとはいえ、気持ちよく仕事を進めてもらえるようにどんな工夫ができるのか。この知識は「マネジメント」や「リーダーシップ」だということに気づけないで、いつまでも自分で集客セールスをし続ける方がいます。
 
 

6.抑制の効いた表現を身につけよう

 
ウェブサイト作りなど、情報発信ツールを作るときの話です。
販売のことを考えると、メリットを主張し元気に断言して、お客さんに買う気持ちを促したくなります。
「これで◯◯できる!〇〇できる!〇〇できる!」というふうに。
しかし、協会は、抑制の効いた表現を身につけたほうが得策です。(特に協会は。普通のインストラクターは元気に断言してもらって大丈夫です)
 
抑制の効いた表現とは、たとえば「花で人の心を癒す、専門家になりませんか?」というような表現です。
自分たちが提供している「価値を定義」し、言い過ぎることも、言わな過ぎることもなく、過不足なく講座のことを表現しましょう。
これには2つ理由があります。
協会ビジネスが上手くいくと、大きな会社や官公庁との付き合いが出てくるものです。あなたが思っているよりも、もっと早く、簡単に、そういうところとの付き合いが出てくるでしょう。
ところが、1960年代のアメリカの映画に出てくる営業マンのような、@リズムよく大きな声で主張する。断言して話し、相手をコントロールする。売ることだけに比重を置く」ような伝え方だと、そのつながりが生まれません。「トーン」が違うからです。せっかくの機会を失ってしまう。
(逆に、表現を変えた途端に、つきあう組織が変わった例もあります)
 
もう一つは、僕がよく話すことなのですが、抑制の効いた表現で売れた時、大声で売れた時よりも、すーっと多くの人に広がっていきやすくなります。協会ビジネスは、みんなに広げてもらうビジネスモデルなので、広がったほうがいい。その意味でも、抑制の効いた表現で成功パターンを見つけることをお勧めします。
 
 

7.インストラクターの成長を無理強いしない

 
インストラクションが苦手な人、未熟な人を変えようとして、立ち止まってしまう人がいます。協会ビジネスは、インストラクター資格を提供したり、学ぶ機会を提供できますが、インストラクターとしてのレベルアップを担保するものではありません。成長は、いつでもその人のペースで進むものです。
資格認定したインストラクターの中から、自然と活躍する人が出てくる。その人達が増えていくように、縁の下の力持ちになるビジネスモデルです。
 
 

8.人の活躍が妬ましい人は、やめておこう

 
たまに、自分が作ったコンテンツを人が広め、活躍することに耐えられない人がいます。「自分が作ったものなのに!自分のほうがすごいのに!」とイライラしてしまう。
あるいは、利益シェアができない方もいます。
「自分が講師をやったら100パーセントもらえるのに!」
そういう方には、そもそも向かないビジネスモデルです。人が活躍するのが嬉しい人にはぴったり合っています。
 
 

9.テキストブックは、しっかり作っておいたほうが得策

 
もしもあなたに時間と能力があるならば、テキストはしっかり作っておくことをお勧めします。シンプルに言えば、基本から応用まで網羅し、分厚く作ることです。
 
テキストが薄くも上手くいった協会はあります。
でも、テキストや手引書をしっかり作った協会は、上手くいく割合が高いと感じています(経験則です)。信頼性が高くなるからでしょう。
当たり前のことも含めて網羅し、「このテキストが一番しっかりしている」「このテキストが定番だ」と言われるくらいのものを作るイメージでつくるといいと思います。
もしも、自分以外にも専門性の高い知り合いがいるならば、分業して作り上げてもいいと思います。
 
 

10.ビジネスパーソン相手の場合は、注意

 
たとえば「プレゼンテーションの方法」を教えるような場合を考えてみましょう。
ビジネスパーソンにプレゼンテーションのやり方を教え、インストラクターに認定し、一緒にこのノウハウを広げていこうとします。
これ、なかなか難しく、工夫が必要です。
 
すでに自分の仕事を持っている人、とくにビジネスパーソンの場合は、ウィークデーに自分の仕事をするのにいっぱいいっぱいで、週末わざわざセミナーを開催するところまでいかないことが多いからです。
(もちろん、それでもセミナーを開催する人は、意欲にあふれていますし、セミナーを開催することから経営について学び、本業でもステップアップすることが多いようです)
 
商品コンセプトや価格設定などを工夫したり、ビジネスパーソンが開催しやすくする工夫をするなどが必要です。その意味で神田昌典さんの主催する「Read for action」は、よく練られたものだと思います。分析してみると面白いですよ。
 
 

11.広がらない前提で「インストラクター資格:高額商品」という選択もある。

 
協会ビジネスというと「日本中、世界中に広げる力を持つビジネスモデル」という印象が強いと思います。でも、おもしろいのはそこだけではありません。
普通に講座を運営すると、3万円とか5万円の価格にしかなりませんが、「資格認定する」「インストラクターになる方法まで伝える」商品に変えることで、30万、40万円の価格設定ができるようになります。
 
ある協会で認定を得て活躍する人はほとんどいないのですが、高価格の商品を提供できるので、収益が大幅にあがった例もあります。受講者とのつながりは強くなりコミュニティは作られるし、満足度も高いので、そこだけでも、よろこびや感謝が行き交う、いいビジネスになりやすいと思います。
もしも、こういった協会が、「ひろがらない」と苦しめば、ビジネス全体が上手くいかなくなるかもしれません。
つまり、協会ビジネスは、その意味をちゃんと理解して、「目的を明確にして」とりくめれば、かなり汎用性の高いビジネスモデルだということです。
可能性があちこちにあるので、それを見抜いてうまく活用してください。いろいろな道があっていいと思います。
 
 
さて、さっと11個のポイントを挙げました。
網羅されているわけではなくて、とりあえず大切そうな11個をあげたのですが、引っかかる方はいるのではないかと思います。役立てていただけたら嬉しく思います。

ー 事例紹介 ー